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無口書店

好き勝手なエッセイ兼、本の感想。内にこもることこそ我が人生という方へ。

【"じぶん書店"レビュー再掲】「理解」の限界を突破しろ。社会とグルーヴするな。

クレムリン / カレー沢薫

この漫画を6人に貸したところ、4人は「未読」で返ってきた。

人に漫画を借りて、「未読」ということがありえるだろうか。 しかも、ネコちゃんギャグ漫画である。 これ以上とっつきやすい案件があろうか。

「未読」と言ったが、正確には皆「1話を読んで、ギブアップした」という申告のもとに返却してきた。 正直すぎやしないだろうか。

好みに合わない本を借りたとしても、「読んだよオモシロカッタヨ」と一応の嘘をつかないだろうか。 それほどのギブアップだったのである(シュールな空気に耐えられないというのが主な理由らしい。軟弱である)。

それ以降、私はこの漫画を「踏み絵」にしている。 この漫画を最後まで読めた者だけを「私の理解者」としている。

内容は、「留年大学生の面倒を猫3匹がみる」そんなお話だ。 これでグッとこなかったらもう決別だ。

この漫画におけるそこはかとない「主体性のなさ」は、陰キャを安堵へ導く。 「社会にグルーヴできない自分」「大勢のうちの一人となれなかった自分」そんな意識を、ボヤボヤにごまかしてくれる。

大学へ行かず労働もしないが、芯は決して揺らがない主人公の男「却津山春雄」。そして見た目の区別がつかず3匹入れ替わっても支障がなく、そもそも名前も全員「関羽」のロシアンブルー。

春雄のように強くなれないだろうか。関羽のように優しくなれないだろうか。 社会に溶け込めなくても、生きる道があるのだろうか。 『クレムリン』の卑屈だけど優しい世界に、現実逃避してほしい。

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